文化政策

連邦制を採用しているスイスでは、様々な財源から文化資金が調達されている。文化に費やされる公的資金は年間およそ30億フランに上り、その多くは地方自治体や州が担っている。

ヴェネチア・ビエンナーレで来場者を迎えるアトリエ
スイス芸術評議会プロ・ヘルヴェティア財団は、スイス文化の海外普及活動を推進している。 © © Andrea Avezzù

スイスの文化振興の一環として、作品の創作、制作、放送、保存に対する支援が行われており、公的機関のほかにも財団やスポンサー、パトロンなどの民間機関がその資金を提供している。

文化への公的資金

文化関連には、年間およそ30億フランの公的資金が費やされている。そのうちの約50%は地方自治体が、40%近くは州が、そして残りの10%強は連邦政府が負担している。三層に分かれるスイスの政治体制のうち、総予算に対する文化予算の割合が最も高いのは地方自治体であり、3%以上を占めている。特にジュネーヴ、チューリヒ、バーゼルではその傾向が強い。芸術や文化に最も多くの予算を充てている州は、チューリヒ州、バーゼル・シュタット準州、ヴォ―州、そしてベルン州であり、連邦政府の文化予算は年間3億2000万フランを超える。

様々な芸術分野が、連邦、州、地方自治体からそれぞれ異なる支援を受けている。演劇と音楽(音楽学校を含む)の資金は主に地方自治体が負担して州が援助を行っているのに対し、映画は連邦政府からの支援を受けている。遺産や文化財の保護は州の管轄だが、報道機関への公的支援は連邦政府と地方自治体が行っている。芸術・デザイン専門大学が受ける公的支援のほとんどは、州と連邦政府が支給している。美術館、視覚芸術、図書館、文学は、三層すべての政府機関から支援を受けている。

文化政策の管轄

連邦政府の文化政策は、連邦文化局とスイス芸術評議会「プロ・ヘルヴェティア財団」が共同で行っている。

連邦文化局(FOC)は、国の文化政策に加えて、文化多様性の振興、保持、普及も管轄している。美術・映画などの芸術作品の創作や、美術館や作品コレクションの管理、文化遺産保護に対する支援を行うとともに、文化教育の提供にも関与している。連邦文化局の拠点はベルンにある。スイス芸術評議会「プロ・ヘルヴェティア財団」は、スイス芸術の海外展開を管轄しており、国内では地域間の文化交流や創作活動の振興に貢献している。財団の本拠地はチューリヒに置かれている。

海外におけるスイスの文化活動に関しては、連邦文化局とプロ・ヘルヴェティア財団が、連邦外務省(FDFA)と連携して行っている。