東日本大震災から10年 – バオム大使からのメッセージ

Local news, 11.03.2021

アンドレアス・バオム駐日スイス大使は、東北 の復興と回復力 に敬意を表し、日本の皆様と共に明るい 未来 を築いて行くことを楽しみにしています。

アンドレアス・バオム大使
アンドレアス・バオム大使 © Ayako Suzuki

東日本大震災から10年を迎える本日、ここで皆さまにメッセージをお伝えできることを光栄に思います。

私の国スイスを代表して、あの大惨事によって命を失った方々、また、影響を受けた方々に心からお見舞い申し上げます。そして、被災地全域にわたる目覚ましい復興への取り組みと、日本の驚くべき回復力に敬意を表します。さらに、最も重要なこととして、東北及び日本の皆さまと共に、明るい未来に目を向けたいと思います。

スイスは、東北地方と深い繋がりを持っています。福島市は、東京オリンピック・パラリンピックに向けたスイスのホストタウンとして、光栄なことに、コンサート、文化交流、学校訪問といった多岐にわたるスイス関連の催しを開催して下さっています。私たちスイス大使館は、非営利団体 Support Our Kidsとの協働により、被災地の学生にスイスでのホームステイ・プログラムを提供し、グローバルな展望を持つ若いリーダーの育成を支援しています。ルツェルン音楽祭、梶本音楽事務所及び建築家の磯崎新氏がプロデュースした可動式コンサート・ホール「アーク・ノヴァ」は、2013年から2015年にかけて、音楽と教育を通して、松島、福島、仙台の文化生活の活性化に貢献しました。また、医療センターから駅、新しい堤防、商店街に至るまで、女川町の素晴らしい復興へのご尽力にも敬意を表します。まだ進行中のこの計画で、スイスがささやかな役割を果たせたことを誇りに思います。

日本とスイスは、さらに持続可能で回復力のある社会の実現に向けた同様の取り組みを行っています。地震、津波、福島の原発事故から10年が経過したことに思いを馳せることは、私たちの目の前にある重要な課題について考える機会を得ることでもあります。その中には、国際協力の強化、有意義なイノベーション、責任ある起業家精神が求められる2030アジェンダをエネルギー部門も含めて実現するという課題も含まれます。

スイスは、東北地方との関係性を様々なレベルでさらに深化させ、よりクリーンで、健康的かつ環境に優しいテクノロジーを活用した未来に向けて、日本とのパートナーシップを継続していくことを楽しみにしています。個人的な話になりますが、今月で、私の日本での任務がスタートして半年となります。パンデミックの状況が許すようになれば、すぐにでも東北地方に伺い、地域を巡り、現地の皆さまやリーダーの方々にお目にかかるのを今からとても楽しみにしています。

美しい東北地方の全ての友人に称賛と尊敬を

駐日スイス大使 アンドレアス・バオム

東日本大震災から10年 東北とスイスの歩み

左上 :東北ユースオーケストラ、左下:SOK スイスホームステイプログラム、右 :女川町地域医療センター、2012年4月に行われた竣工式にて 。
左上 :東北ユースオーケストラ、左下:SOK スイスホームステイプログラム、右 :女川町地域医療センター、2012年4月に行われた竣工式にて 。 ©在日スイス大使館

スイスは、被災地の復興に向けて、また、被災した方々の心身に寄り添うべく、様々な支援活動に取り組んできました。スイスの取り組みは、いかなる形で被災地の復興及び活性化に貢献できているのでしょうか。ここでは、多くの活動のうち、3つの取り組みをご紹介いたします。

Support Our Kids (SOK)

在日スイス大使館は2011年より、被災した子どもたちの自立を支援する次代の創造工房 / Support Our Kids(SOK) が主催する、スイスホームステイプログラムに包括的な協力を行ってきました。このプログラムに参加した生徒がそこで得たことは何だったのでしょうか。どうぞ、ご覧下さい。

 

東北ユースオーケストラ

世界中の著名な音楽家が集まるスイスの「ルツェルン・フェスティバル」が、日本の音楽エージェントのKAJIMOTOと共に、建築家の磯崎新、彫刻家のアニッシュ・カプーアとタッグを組み、多くの日本のパートナーと一緒に被災地への復興支援として企画した「アーク・ノヴァ」プロジェクトをきっかけにスタートした東北ユースオーケストラ。

同オーケストラの原点は、震災直後に音楽家の坂本龍一氏の呼びかけで始まった、被災した学校の楽器の点検・修理のプロジェクトでした。修復が進んでいく中で、坂本氏が被災地の子どもたちのオーケストラをつくりたいという想いをあたためていたところ、「Lucerne Festival ARK NOVA 松島 2013」から出演依頼があり、オーケストラの結成が実現されることになりました。

その後、2015年に、岩手県、宮城県、福島県出身の小学4年生から大学生を対象とした楽団員の公募を行い、100名を超えるメンバーで活動をスタートしました。月に一度、福島市で合同練習会を行い、年に一度、東北地方と東京の両地で定期演奏を開催してきたほか、被災地を中心に有志の演奏会も継続しています。坂本龍一代表・監督のもと、同オーケストラは、音楽を通じて出身地も年代も異なる団員がのびのびと交流し、聴衆との絆を深めるオープンな場として育まれてきました。

震災を乗り越え生まれた若々しい演奏を、東北から全国、そして世界中に届けていきたいと願いと共に、オーケストラは今後も活動を続けて行きます。

女川町地域医療センターのいま

スイスが復旧再建整備に携わった女川町地域医療センターの 齋藤充センター長からのメッセージをご紹介いたします。

東日本大震災では、女川町では人口の1割弱の方が犠牲になり、家屋の7割以上が全壊または大規模半壊という、壊滅的な被害を受けました。旧女川町立病院も1階が津波で浸水し、カルテが消失し、外来や検査機器などが破壊され、危機的な状況にありました。被災した町民に安心を与えるため、何とか2階のホールや理学療法室を救護所や仮設診療所に設え医療を継続しましたが、並行して町の復興も進めなければならない中、病院の再生までには相当な困難が予想され、不安でいっぱいでした。そのような中、スイスの皆様から、多大なる財政的支援をいただくことができ、どの被災地域よりも早く、震災の年の10月には、院内の改修工事も終了し、19床の診療所と100床の老人保健施設からなる「女川町地域医療センター」として再出発をすることができました。

「震災復興に向かう町民の健康を守り、生活を支えるサービスの提供」を目標に、2011年9月には町外に建設された仮設住宅への巡回診療を、2012年2月には震災後に診療所が無くなった2つの離島へ巡回診療を開始、2014年4月には居宅介護支援事業所を開設、2016年4月には病児・病後児保育施設の開設など、町民のニーズに応えられるよう、一歩一歩事業を進めて来たつもりです。 震災後、女川町では、仮設住宅の建設や仮設商店街の開業に始まり、新しい女川駅の開業と石巻線の再開通、切土・盛土造成工事、災害公営住宅や自立再建住宅の建設、駅前商業施設、魚市場、新しい町庁舎、小中一貫校などが次々に建設されるなど、復興のトップランナーと言われるほど目まぐるしい復興を遂げてまいりました。これまでを振り返ると、復興とともに町民に寄り添い続けた10年間でした。それができたのも、スイスの皆様の様々な支援があったからと感謝しております。  

女川町地域医療センター  齋藤充センター長

スイス赤十字社、スイス財団、カリタススイスからの義援金約19億円が、同医療センター整備の総事業費として貢献しています。メッセージをお寄せくださった齋藤充センター長、同医療センターの皆さま、女川町観光協会の皆さま、誠にありがとうございました。